滞納から差し押さえまでの流れ

差し押さえは、裁判所が「強制執行」を命じることで初めて実行されます。滞納してすぐに差し押さえになるわけではありません。通常、次のような段階を経ます。

STEP 1(滞納直後)
電話・督促状による催告
返済が滞ると、まず電話や書面での催告が始まります。この段階は返済交渉・債務整理の余地が最も大きく、自力での対処もできます。
STEP 2(滞納2〜3ヶ月〜)
一括請求・期限の利益の喪失
分割払いの権利(期限の利益)が失われ、残債全額の一括返済を求める通知が届きます。無視し続けると法的手続きに移行します。
STEP 3(滞納数ヶ月〜)
裁判所から「支払督促」または「訴状」が届く
ここが重要な分岐点。支払督促には2週間以内の異議申立て期限があります。何もしないと自動的に差し押さえが可能な状態になります。
STEP 4
債務名義の取得(判決・仮執行宣言)
裁判で負ける・異議を出さずに確定すると、債権者が強制執行できる「債務名義」を取得します。
STEP 5(最終段階)
差し押さえ命令の執行
裁判所が会社(給与)・銀行(預金)・不動産登記所に対して差し押さえ命令を送ります。本人への事前通知はありません。
⚠️ STEP 3(裁判所から書類が届いた時点)でも、動けばまだ差し押さえを止められます。STEP 4・5に進むほど選択肢は狭まります。書類が届いたら放置せず、今日中に専門家に連絡してください。

差し押さえられる財産の種類と限度額

差し押さえの対象は主に3種類あります。ただし、生活の最低限を守るために法律で差し押さえ禁止の限度額が定められています。

対象財産 差し押さえ可能な範囲 会社・銀行への通知
給与 手取り額の1/4(月収44万円超は33万円を超える部分) 会社(雇用主)に通知される
預金口座 口座残高の全額(生活費分を超えても差し押さえられる) 銀行に通知される
不動産 土地・建物(競売にかけられる) 登記所・競売公告
給与差し押さえが最も怖い理由

給与差し押さえでは、裁判所命令が直接職場の経理・総務部門に届きます。上司や同僚に借金・滞納の事実が知れ渡ることになり、職場での立場や雇用継続に影響が出る可能性があります。
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差し押さえ前にできる5つのステップ

督促が来ている・裁判所書類が届いたという段階で、今すぐ取れる行動を優先順に整理します。

1
書類・手紙を絶対に無視しない
督促状・訴状・支払督促を無視するほど、差し押さえまでの時間が短くなります。特に裁判所から書類が届いた場合は、期限内に対応しなければ債権者の言い分が全面的に認められます。怖くても封を開け、期限を確認してください。
2
滞納している全社の残高を把握する
「どこに、いくら、滞納しているか」を把握していないと相談も解決もできません。手元の書類を整理し、CIC・JICCの信用情報開示で全社の借入状況を確認しましょう。手数料は1機関500〜1,000円、オンラインで申請できます。
3
弁護士・司法書士に相談する(受任通知で止まる)
弁護士・司法書士が債務整理を「受任」した時点で、各債権者に受任通知が送られます。受任通知が届くと、債権者は直接の取り立て・差し押さえ手続きを止める義務があります(貸金業法21条)。相談無料の事務所も多く、相談だけなら費用はかかりません。
4
裁判所書類の期限内に異議申立て・答弁書を提出する
支払督促なら届いてから2週間以内の「異議申立て」、訴状なら「答弁書」の提出期限があります。弁護士に依頼すれば代理で対応してもらえます。自分で対応する場合も、書類に記載された裁判所に期限前に連絡すれば書き方を教えてもらえます。
5
法テラスを使ってお金がなくても相談する
弁護士費用が払えないと感じている方でも、法テラスを使えば無料相談・費用立替制度が利用できます。収入・資産が一定水準以下であれば、弁護士費用を立て替えてもらい、後から月々1万円前後の分割で返済する方法があります。

裁判所から書類が届いたらやること

裁判所からの書類は、差し押さえの直前段階です。書類の種類によって対応が異なります。

支払督促が届いた場合

支払督促は、債権者の申立てで裁判所が発行する文書です。届いてから2週間以内に「督促異議申立書」を提出しないと、仮執行宣言が付いて差し押さえが可能になります。

やること(2週間以内)
  • 書類に記載されている裁判所と期限を確認する
  • すぐに弁護士・司法書士に連絡する
  • 弁護士に依頼できない場合、自分で「督促異議申立書」を裁判所に提出する(書式は裁判所HPにある)
絶対にやってはいけないこと

・書類を無視する → 自動的に差し押さえが可能な状態になる
・期限を過ぎてから「知らなかった」と言いに行く → 基本的に覆せない
・「どうせ無理」と思って放置する → 給与差し押さえで職場にバレる

訴状(民事訴訟)が届いた場合

訴状が届いた場合、指定された期日に答弁書を提出するか、裁判期日に出頭する必要があります。無断欠席・答弁書未提出は「敗訴」扱いになります。金額が大きい場合は弁護士への依頼が確実です。

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差し押さえを止める・遅らせる方法

すでに差し押さえ命令が出ている・直前という状況でも、法的手段で止められる場合があります。

任意整理——交渉で返済条件を変える

弁護士・司法書士が債権者と直接交渉し、将来利息をカットして毎月の返済額を減らす方法です。受任通知が届いた時点で取り立ては止まります。給与差し押さえのように職場への影響もなく、財産を失わずに済みます。

個人再生——裁判所を通じて借金を大幅に減額する

裁判所に申立てをすることで、借金を最大1/5まで圧縮できる手続きです。個人再生の申立てが受理されると、差し押さえ手続きは法律上停止されます(民事再生法39条)。住宅ローン特則を使えばマイホームを守りながら整理できます。

自己破産——すべての借金をゼロにする

自己破産の申立て後は、裁判所が「中止命令」を出して差し押さえを止めることができます。一定の財産は処分されますが、給与・預金の差し押さえは解除されます。99万円以下の現金や生活用品は手元に残せます。

差し押さえを止める手段の比較
  • 任意整理:財産を守れる・職場に知られない・費用が比較的安い
  • 個人再生:マイホームを守りながら借金大幅減額・給与差し押さえを止められる
  • 自己破産:借金ゼロ・差し押さえ停止・ただし一定財産は失う
  • 弁護士受任通知のみ:相談・受任だけで即日取り立て停止(整理方法は後で決められる)

よくある質問

差し押さえは事前に通知されますか?
差し押さえ命令が出る前に、裁判所から「支払督促」や「訴状」が届きます。これらは差し押さえの予告段階であり、この時点で行動すれば差し押さえを回避できる可能性があります。差し押さえ命令が執行される段階では、給与の場合は会社へ、預金の場合は銀行へ通知されますが、本人への事前通知はありません。
差し押さえを止めるにはどうすればいいですか?
差し押さえを止める最も確実な方法は、弁護士・司法書士に依頼して債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)を申請することです。弁護士が受任通知を送った時点で、債権者からの取り立てや差し押さえ手続きは一時停止されます。すでに差し押さえ命令が出ていても、個人再生・自己破産の申請により停止できる場合があります。
給与が差し押さえられると会社にバレますか?
バレます。給与差し押さえは雇用主(会社)に対して命令が届くため、会社の経理・総務担当者に借金・滞納の事実が知られることになります。これを避けるには、差し押さえ命令が出る前に弁護士に相談して債務整理を進めることが最善策です。
裁判所から書類が届いたらどうすればいいですか?
無視は絶対にNGです。支払督促は届いてから2週間以内に「異議申立て」をしなければ、そのまま差し押さえに進みます。訴状の場合は「答弁書」の提出期限があります。書類が届いたらすぐに弁護士・司法書士に相談してください。費用が心配な場合は法テラスの無料相談も利用できます。

まとめ

  1. 差し押さえは突然来ない——滞納→督促→裁判書類→執行という段階を経る
  2. 裁判所書類が届いた時点でもまだ間に合う。2週間以内の異議申立てが鍵
  3. 弁護士・司法書士が受任通知を送れば、その日から取り立て・差し押さえは止まる
  4. 給与差し押さえは職場にバレる——会社への通知が来る前に動くことが重要
  5. 費用がなくても法テラスの立替制度で動ける。「お金がない」は止まる理由にならない

差し押さえは「知らなかった」で防げないが、「動いた」で止められます。一人で抱え込まずに今日だけで相談先まで動いてみてください。

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参考・出典
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監修・執筆
よりそいマネー編集部
借金・債務整理に関する情報をわかりやすく提供することを目的として運営しています。記事の内容は公開情報・法令をもとに作成していますが、個別の法律相談は専門家にご確認ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律アドバイスではありません。具体的な手続きについては弁護士・司法書士にご相談ください。