滞納から差し押さえまでの流れ
差し押さえは、裁判所が「強制執行」を命じることで初めて実行されます。滞納してすぐに差し押さえになるわけではありません。通常、次のような段階を経ます。
差し押さえられる財産の種類と限度額
差し押さえの対象は主に3種類あります。ただし、生活の最低限を守るために法律で差し押さえ禁止の限度額が定められています。
| 対象財産 | 差し押さえ可能な範囲 | 会社・銀行への通知 |
|---|---|---|
| 給与 | 手取り額の1/4(月収44万円超は33万円を超える部分) | 会社(雇用主)に通知される |
| 預金口座 | 口座残高の全額(生活費分を超えても差し押さえられる) | 銀行に通知される |
| 不動産 | 土地・建物(競売にかけられる) | 登記所・競売公告 |
給与差し押さえでは、裁判所命令が直接職場の経理・総務部門に届きます。上司や同僚に借金・滞納の事実が知れ渡ることになり、職場での立場や雇用継続に影響が出る可能性があります。
差し押さえ前にできる5つのステップ
督促が来ている・裁判所書類が届いたという段階で、今すぐ取れる行動を優先順に整理します。
裁判所から書類が届いたらやること
裁判所からの書類は、差し押さえの直前段階です。書類の種類によって対応が異なります。
支払督促が届いた場合
支払督促は、債権者の申立てで裁判所が発行する文書です。届いてから2週間以内に「督促異議申立書」を提出しないと、仮執行宣言が付いて差し押さえが可能になります。
- 書類に記載されている裁判所と期限を確認する
- すぐに弁護士・司法書士に連絡する
- 弁護士に依頼できない場合、自分で「督促異議申立書」を裁判所に提出する(書式は裁判所HPにある)
・書類を無視する → 自動的に差し押さえが可能な状態になる
・期限を過ぎてから「知らなかった」と言いに行く → 基本的に覆せない
・「どうせ無理」と思って放置する → 給与差し押さえで職場にバレる
訴状(民事訴訟)が届いた場合
訴状が届いた場合、指定された期日に答弁書を提出するか、裁判期日に出頭する必要があります。無断欠席・答弁書未提出は「敗訴」扱いになります。金額が大きい場合は弁護士への依頼が確実です。
差し押さえを止める・遅らせる方法
すでに差し押さえ命令が出ている・直前という状況でも、法的手段で止められる場合があります。
任意整理——交渉で返済条件を変える
弁護士・司法書士が債権者と直接交渉し、将来利息をカットして毎月の返済額を減らす方法です。受任通知が届いた時点で取り立ては止まります。給与差し押さえのように職場への影響もなく、財産を失わずに済みます。
個人再生——裁判所を通じて借金を大幅に減額する
裁判所に申立てをすることで、借金を最大1/5まで圧縮できる手続きです。個人再生の申立てが受理されると、差し押さえ手続きは法律上停止されます(民事再生法39条)。住宅ローン特則を使えばマイホームを守りながら整理できます。
自己破産——すべての借金をゼロにする
自己破産の申立て後は、裁判所が「中止命令」を出して差し押さえを止めることができます。一定の財産は処分されますが、給与・預金の差し押さえは解除されます。99万円以下の現金や生活用品は手元に残せます。
- 任意整理:財産を守れる・職場に知られない・費用が比較的安い
- 個人再生:マイホームを守りながら借金大幅減額・給与差し押さえを止められる
- 自己破産:借金ゼロ・差し押さえ停止・ただし一定財産は失う
- 弁護士受任通知のみ:相談・受任だけで即日取り立て停止(整理方法は後で決められる)
よくある質問
まとめ
- 差し押さえは突然来ない——滞納→督促→裁判書類→執行という段階を経る
- 裁判所書類が届いた時点でもまだ間に合う。2週間以内の異議申立てが鍵
- 弁護士・司法書士が受任通知を送れば、その日から取り立て・差し押さえは止まる
- 給与差し押さえは職場にバレる——会社への通知が来る前に動くことが重要
- 費用がなくても法テラスの立替制度で動ける。「お金がない」は止まる理由にならない
差し押さえは「知らなかった」で防げないが、「動いた」で止められます。一人で抱え込まずに今日だけで相談先まで動いてみてください。
- 民事執行法(差し押さえ禁止財産・給与の差押え範囲)e-Gov 法令検索 → https://laws.e-gov.go.jp/
- 貸金業法21条(取立て行為の規制)e-Gov 法令検索 → https://laws.e-gov.go.jp/
- 民事再生法39条(強制執行等の中止命令)e-Gov 法令検索 → https://laws.e-gov.go.jp/
- 法テラス(日本司法支援センター)費用立替制度 → https://www.houterasu.or.jp/
- 裁判所「支払督促の申立て」→ https://www.courts.go.jp/